ブラック・ダリア ジェイムズ・エルロイ

ブラック・ダリア (文春文庫)

ブラック・ダリア (文春文庫)



思っていたより読みやすくてびっくりだ。そして面白かった。
ずっともっと読みにくくてハードだと思っていてなかなか手が出なかったのに。
先に読んだ「クライム・ウェイヴ」の短編はもっと混沌とした世界だったので、固有名詞ともどもなかなか頭に入らないことを覚悟して読み始めた。ストーリーは数年にわたる話で、短編よりもタームが長いので短い間の混沌とした世界とはまったく違った。「L.A. コンフィデンシャル」は映画を観たあと読んだけれど、映画よりずっと長いタームの話だったのを思い出した。
よっぽど何も考えずに読んだのか、裏切られ通しでもあった。最初は断片だらけのような感じだけど、結末に近づくとその断片がパズルのピースのようにうまって事件とその背景が見えてくる。ミステリーなら当たり前のような話だけど、実際こういうふうに感じるのは少なかったりするし、裏切られ通しと感じたのはそんなところにそのピースがはまるわけないと思ったものがはまったり、ピースじゃないと思ったものがピースだったりという具合だったからだ。
戦後のL.A.、事件に取り憑かれた主人公、思わぬところで深みにはまっている登場人物、一般的な善悪が無意味に思える独特の世界。
もっと早く読めばよかったなぁと思ったけれど、前に読んでものれなかったかもしれないし、今読んで面白かったのだからよかったのだと思うことにした。
何故だか印象に残ったのは、夫が自殺した未亡人と会話を交わす主人公。別世界にいる主人公がふと普通の世界にもどってきたような感じがしたので。


The Black Dahlia (2006) - IMDb
ブラック・ダリアは今年映画化。
ブライアン・デ・パルマ監督でブルガリアで撮影中らしい。
キャストはジョシュ・ハートネットアーロン・エッカートスカーレット・ヨハンソンヒラリー・スワンク
来年公開かなぁ。どんな感じになるのやら。